人生100年時代のキャリア形成

 

未曽有の人生100年時代を見据えた戦略的なキャリア形成

到来する未曽有の人生100年時代

世界屈指の長寿国である日本の場合、平均寿命は男女ともに過去最高(2021年の日本人の平均寿命:男性が約81歳、女性が約87歳)を更新し続けており、「人生100年時代」の到来が現実味を帯びてきている。これは、今からは想像もできないような余りにも長い「老後の第二の人生」が待ち受けているということでもある。

周知の通り公的年金の支給開始年齢が60歳から65歳へ段階的に引き上げられたことを受け、高年齢者雇用安定法により企業は従業員が希望すれば65歳まで雇うことを義務づけられたが、特に日本人の高齢者は就業意欲が非常に高い傾向にあるとはいえ、現実的にすべての希望者が65歳以上まで働けるわけではない。

さらに言えば、支給開始年齢が70歳となる可能性もあり、それまでの預貯金を含めた金融資産や実際の年金受給額(厚生年金[老齢厚生年金]の年間平均支給額の推移は右肩下りの状態)にもよるが、仮に働く意欲がなくとも生計を立てていくために働く必要に迫られることになるだろう。

企業が定年退職を迎えた社員たちに支払う「退職金」についても、大手企業を中心にその金額の減少が続いており、その制度自体を廃止している企業も急増しているため、過度な期待は禁物だ。定年退職したら「退職金」と「公的年金」でのんびり余生を過ごす、そんな時代は既に終わりを告げているのかもしれない。

参考までに申し上げておくと、年金以外の収入がなくなった際の必要な老後資金(現在の生活費と将来の年金受給額との差額×想定される余命年数分)は、ご本人の定年年齢や退職金、それまでの貯蓄額、必要な生活費・特別支出、実際の寿命などによって変わるため、あくまで目安となるが、一般的に3,000万円以上と言われている。(この記事を執筆した直後に、人生100年時代を見据えて個人の資産形成を促す金融庁の報告書では必要な老後資産は2,000万円との試算が示された。)


自己責任のキャリア形成

それでは、ロールモデル不在の人生100年時代を見据えた場合に今から取り組むべきことは何か? その答えとして以下のようなポイントが挙げられるが、ここで言うキャリア形成の観点においては特に中長期的に必要とされる専門的な知識・技能の習得」、「会社に依存しない自立心と生きた人脈づくり」、「場所・時間や雇用形態にとらわれない働き方対応力」が重要になるだろう。

また、著書『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』で長寿時代の生き方を説いた英国ロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏も、これからの「人生100年時代」を迎えていくにあたって特に重要性が増すものとして、実際に以下の3つを挙げている。

政府による「一億総活躍社会の実現」や「働き方改革」、「人生100年時代構想」といった旗印はあるものの、つまるところは、個人の自己責任という名のもとで、近い将来に訪れる未曽有の変化に取り残されないようにするために、社会人生活の比較的早い段階から戦略的かつ計画的にキャリアを形成していく必要があることは言うまでもないだろう。